自転車は徒歩の代替ではない

WIRED.jp

さてさて上の記事では松浦さんは大切なことをひとつ書き忘れてる。いや、連載の前の記事では書いてあるんだけど、あの記事だけでは読者に伝わらないと思う。

それは「ママチャリという鬼っ子を容認することによって歩道上の歩行者の安全が現在著しく損なわれている」ということ。これが昨今の自転車論議の大前提でしょう。これが読者に認識されていないと、ブクマコメントにみられるように「これはいいガラパゴス、欧米は関係ない」みたいな頓珍漢な反応が返ってしまう。

ブクマで「ママチャリはじじばばが乗れるようにしたことに意義がある」みたいなコメントがあって、それは確かに昨今の日本の自転車風景の一面をよく表してる。でもそれは歩行者の側の甚大な犠牲があってこそ。ママチャリに乗れないさらなる弱者(老人や子供、車いすの人、ベビーカー等)は、歩道上をわがもの顔で行き交うママチャリのおかげで大変肩身の狭い思いをしている。前後からひっきりなしにやってくる自転車を避けるために、そこが歩道なのにもかかわらず真ん中も歩けず常に左右に避けてなければならない。それって明らかにおかしいでしょう?

じじばばのように安楽歩行器として自転車を必要とする人はそれこそ電動歩行器などを使ってもらうのがよい。ママチャリのように中途半端にスピードが出て歩行者に恐怖を与える乗り物である必要がない。安楽歩行器を同じく手放せない若者にいうべきは歩行器を降りて歩けというだけ。駅までの十数分くらい歩け。でなければせめて車道を走るか。

そもそも、「最寄駅まで自転車」に代表されるような徒歩の代替としての自転車はエコでも何でもなく、ただのゴミを増産する悪しき因習の一つにすぎない。日本の自転車対策は結局、歩道からの車道への誘導を通して、本来の適正数(車道を走っても自転車に乗りたい人)にまで自転車を漸減させていくほかないと思う。

あと欧米の経験によると、自転車レーンの整備はむしろ事故を増大させる。当たり前だけど自転車も含めてほとんどの事故は交差点で起きるため、自転車専用レーンを導入しても交差点以外の相対的に少ない事故しか減らせない。一方で、専用レーンを増やすということは、レーンから車道への進入ポイントを増やすことになるため、そこでの事故の増加につながる。つまりレーンが整備されることによって実質的に交差点が増えてしまうのだ。

個人的には、

  • 歩道上を片側通行(左側通行)に限定
  • 十分広い歩道上には自転車専用通行帯を設け、それ以外の部分の通行を厳密に取り締まる
  • 歩道上の通行帯は自転車が高速走行できないような障害を設ける

というような対処を順次行っていことを通して、自然と自転車が車道を走るように誘導するのが最も現実的ではないかと思っている。