今月のアフタヌーン
体調が悪くなりつつある。
げんしけん
今月のげんしけんの面白さにはちょっと触れられずにはいられない。同人誌をたった3冊売った(配った)だけのストーリーなのに、いろんな要素を見事に突っ込んで確実にストーリを進め、広げていっている。
この漫画はたまにしか読んでなかったんで、異端者(非オタク)の視点を交えながらオタクの日常を面白おかしく紹介する、っていう類の漫画だと最近まで思ってた。ところが単行本を1巻から読んでみると、オタクのプライベートに関する微妙な領域について、最初からかなり細かく描写しているのに驚いた。ここで言う微妙な領域というのは、彼らの仲間(サークル)内でのパーソナリティと、彼らが仲間にも見せられないプライベートな内面との間の曖昧な境界のことだ。作者はオタクのリアルなセックスの部分をあえて真正面からネタにすることで、彼らが必然的にまとわざるを得ない「ポーズ」の部分と、その後ろ側にあるリアルな欲求との間の葛藤をうまく描写している。テーマは最初から一貫していたのだ。
この漫画のストーリー自体はオタクの生態紹介的な話だけれども、描かれているテーマは現代の若者に広く当てはまるような普通の心理の描写だ。電車男によってなんだかよくわからないデフォルメされたオタク観が世間に広まってしまうことはもはや避けられないけれども、げんしけんが描くようなオタクの「普通な」日常生活も、少しは伝わってほしいと思う。
あと、一つ一つのエピソードをわりとコンパクトにまとめつつも着実にストーリーが進んでいっていることにも感心する。こういう話の進め方は月刊誌ならではの良さだと思う。