陽炎日記
やっぱ漫画のことしかかけないな。
今日はこれ。
- 作者: 木尾士目
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/01/21
- メディア: コミック
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いわずと知れた木尾士目、のデビュー作。その後「五年生」という作品を経て「げんしけん」にいたる、らしい。
げんしけんはオタク漫画と一般には認識されているだろうけど、まあ確かにオタ文化コメディの部分も非常に面白いんだけれど、まあそれは内輪的なノリがどうしもあるんで、作品的にほんとに評価すべき部分はむしろ登場人物間の恋愛模様の描写のほう。こっちのほうに感心して読んでしまう。
そういう恋愛だとか性、セックスだとかいう要素は、この陽炎日記に凝縮されてて、木尾士目のそっちサイドが読みたい人にはすごくお勧め。
内容は大学生くらいの時点のリアルな青春もの。単行本の絵をみればわかるとおり、ラブコメでは全くない。
蛇足だけれど、このくらいの年齢レンジの青春モノ書く作品って最近は少ないよね。80年代くらいの漫画だと登場人物が大学生のラブコメがわりあったとと思うんだけれど、90年代後期以降は高校生以下の話ばっかのような気がする。最近だと20代後半の社会人くらいのいわゆる非モテ的なネタの漫画が(特にスピリッツで)増えてきたけれども。
蛇足もどる。この単行本の構成は、それぞれ話としては独立な陽炎日記、陽炎日記2、点の領域の三本立て(単行本掲載順)。作者自身があとがきで、
- 点の領域
- 妄想
- 陽炎日記
- 処女だの童貞だの
- 陽炎日記2
- 肉体問題
と紹介してる。こっちは雑誌掲載順、つまりそのままデビュー作、二作目、三作目。作者自身も突っ込んでるとおりその間に何があったのでしょう(笑)。昔を思い返してニヤリとしてしまう。
点の領域は、まあ妄想ですそのまんま。ちょっと劇画調エロ漫画チック。
陽炎日記1は、まあありがちといえばありがちなプロットの青春モノなんだけれど、登場人物のキャラクターが類型的な線を基本的に踏襲しながらも少しはずしていて、その外し方のセンスが良い。人物、状況描写と台詞回しがとても細かいのにも関わらず、ストーリーのテンポが損なわれていないところが木尾士目らしい。とても小気味が良い作品。
陽炎日記2は圧巻。セックスと恋愛感情の相互関係を真正面から描く。この題材をちゃんと漫画で書ききってやろうという男気に惚れる。すごい。
げんしけんも陽炎日記もどっちも大学生の恋愛モノだけれど、五年生(未読)ではもう少し広い人間模様が見られるのだろうか? そちらも読んでみたい。
でも、この陽炎日記を雑誌連載当時*1に見ていたとしても、目立たなかっただろうなあ。スルーしてそう。そういう作品がこうちゃんと単行本になっているのはすばらしいことだ。
追記
非モテのをめぐるネット議論ってようわからんのだけれど、陽炎日記 (2) で書かれているような「セックス(別にそれ以外のスキンシップでも可)」→「恋愛感情」の回路ってちゃんと意識されているんだろうか。それは性欲を感情に優先させるDQNな連中、とかそういう単純なステレオタイプには回収されないもんだ。
これは(少なくとも男にとっては)避けて通れない回路であって、それを無視したお話はお話でしかないと思う。身体が絡む問題に思考の一貫性を保とうとするのは無理っすよ、どうしたって。
ここ(きみたちは、また別の言語を学ばなくちゃならないだろうから)のように一貫性を保てないと正直に自覚している感覚はすごく健全だと思う。えらそうですみません。